映画『ムーン』を観ました。デヴィットボウイの息子であるダンカン・ジョーンズが監督をしている期待作です。まず感想から言うと、この映画は、観終わった後にいい意味で考えさせられ、いっぱい語りたくなるような作品でした(なので、いっぱい語ります。*これから観る人は読まない方がいいかもしれません)。舞台設定が月面基地という限定された空間と実際の”登場人物”が主人公のサムと彼のクローン、ロボットのみというシンプルな構成でいながら、スリリングにストーリーを展開していくあたりは、監督のセンスと力量をとても感じました。一応スリラー的なふれこみで宣伝されていたけど、僕には哲学的にも思えたし、”ポストヒューマニズム”的なメッセージ性や未来への問題提起が随所に組み込まれていたと思います。でも全体的にはそういった壮大になりがちなテーマを前面に押し出さず、コンパクトにかっこいいイギリス映画(製作)に仕上がっているのが、この映画の魅力のひとつだと感じました。(予算もそれほどかかって無さそうだし。)
主人公が地球に住んでいる奥さんのテレビレターを観ているシーンなんかは特に、監督の父親デヴィットボウイの曲『スペースオディティ』を想像させ、親子の世界観も確信的ながら自然に投影されていると感心してしまいました、、、あと印象的だったのは、サムと人の感情を持ったかのようなロボットとの哀愁が漂う”会話”や、彼の記憶をインプットしたクローンとの友情にも似た奇妙なやりとりが、宇宙という究極に孤独な空間の中で、本来人間が持っているコミュニケーションの本質を浮き彫りにし、問いただしていたような気がしました。全然知らないまったくの他人よりも、自分が"心"を通い合わせていると感じているロボットとの一方的なコミュニケーションの方が、環境や場合によっては快適であったり、より機能的かもしれないわけで、(実際老人ホームや養護施設、病院ではこうしたことがすでにおきていると聞きます。ある意味、自分達がしている普段のメールでのやりとりもそうかもしれません、、、)こうして僕もブログしてるけど、結局のところ”独り言”であり、コンピューターを媒体としている限りはロボットが書いていても誰もわかりません。自分の過去の記憶を完全に持ったクローンでも内容はたぶん同じになるわけで、そうなるとどっちがオリジナルの自分かもう解らなくなってくるけど、、人間のアイデンティティーそのものについても考えさせられた作品でした、、、この映画かなり好きです。

